太陽7話 展示の来訪者

教室内に張り巡らされた鏡の間で、煌めく七色の光が飛び交っている。

(綺麗……こんな展示の仕方もあるんだ)

そんな中、イリアさんは執事さん達に丁寧に光の魔術の説明をしている。

執事「さすがイリア様、とても興味深いものばかりですね」

メイド「王妃様もイリア様にお会いしたいとおっしゃっていたのですが、ご公務で……」

イリア「そうですか、残念です。母上によろしく伝えておいてください」

満足そうに帰って行く執事さん達を、イリアさんはにこやかに見送った。


……

執事さん達が帰った後…-。

教室の前の廊下に人影すら過らない。

イリア「……静かですね」

イリアさんは沈黙を破るように、ぽつりとつぶやく。

自嘲気味に微笑むイリアさんを見て、胸がチクリと痛んだ。

(こんな素敵な展示なのに)

きらきらと輝く美しい光は、私達二人だけを照らし出している。

〇〇「イリアさん、私呼び込みをしてきます!」

イリア「〇〇様……?」

〇〇「こんなに素敵な展示なんです、きっと皆実際に見たら…-」

その時…-。

複数の人影が近づいてくる。

同時に、どこか聞き覚えのある声が耳に滑り込んできて……

(もしかして……)

扉が開くと、文化祭の準備を見て回った際に出会った学生達の姿があった。

学生1「イリアさん、〇〇さん、探しましたよ~」

イリア「えっ……」

学生2「ポスターとか貼ってないから、どこで展示が開かれてるかわからなくて」

学生3「皆探していましたよ」

イリア「あ……」

学生4「イリアさんらしいですね」

先ほどまでに静まり返っていたのが嘘のみたいに、賑やかな空気が流れ出す。

学生1「この魔術、綺麗ですね」

イリア「はい! それは…-」

イリアさんは、嬉しそうに皆に一つ一つ説明をしていく。

皆もそれに興味深く耳を傾けて……

学生1「イリアさんの説明はわかりやすいですね」

学生2「うん、難しい内容かと思ったけど……僕にでも理解できる」

イリア「本当ですか!? 魔術の素晴らしさに触れていただけて嬉しいです」

次から次へと皆に褒められ、イリアさんは頬を染めて照れている。

(イリアさん……良かった)

そんなイリアさんの姿を見て、私の心も温かい気持ちでいっぱいになる。

学生4「他の皆にも声を掛けてみるよ」

イリア「ありがとうございます!」

……

いつの間にか、イリアさんの展示会場は見物人で溢れていた。

魔術をわかりやすく学べるという噂が広がっているようだった。

見物人「イリアさん、この魔術を詳しく教えてくれませんか?」

イリア「これは…-」

イリアさんが一生懸命作った展示が、たくさんの人に見られている。

イリア「……」

ふと、イリアさんと視線が合う。

忙しい対応の隙を見て、イリアさんは私の元へとやってきた。

〇〇「イリアさん?」

眼鏡の奥の、知性的な瞳が細められて……

イリア「すべて、〇〇様のお陰です」

胸元に手を当て、イリアさんはお辞儀をするかのように私の顔を覗き込む。

その綺麗な所作に、胸が小さな音を立てた。

〇〇「……そんなことないです。イリアさんが頑張ったから」

イリア「……か?」

人の声に重なり、イリアさんの声が聞こえない。

〇〇「……えっ?」

聞き返すと、イリアさんの顔が私の耳元に寄せられる。

イリア「この後、二人で文化祭楽しみませんか?」

(二人で……)

少し甘い響きをはらんだイリアさんの声がいつまでも耳に残り、私の胸を高鳴らせた…-。

 

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