第2話 呪いの足音

その翌日…-。

私はヴァイリーさんと城下街を見学に来ていた。

ヴァイリー「獣人っつっても、普通の人間とあんま変わんねぇだろ」

街の人達は、耳が頭にあったり尻尾が生えたりするけれど、確かに獣というよりは、普通の人の姿に近かった。

ヴァイリーさんは、歩調を私に合わせて街を案内してくれる。

(昨日はすぐ帰れって、言われたけど……)

ヴァイリー「……なんだよ、ヘンな顔して」

○○「あ、いえ……」

ヴァイリー「……案内はしてやるけど、これ終わったら、なるべく早く帰れよ」

(……やっぱり)

キッパリと言い切られてしまい、胸が少し痛む。

ヴァイリーさんは、うつむく私を見やり、ため息を吐いた。

ヴァイリー「別に、オマエが嫌いなワケじゃ……」

??「おや、ヴァイリー様!」

その時、一人の男性に声をかけられた。

ヴァイリー「おう、おっちゃん! 相変わらず忙しそうだな」

おっちゃんと呼ばれたその人は、値札の貼られた大きな荷物をたくさん抱えていた。

(商人さん……なのかな?)

街の人「ヴァイリー様もスミにおけないねぇ、こんなかわいい子連れて」

ヴァイリー「……っ! 違うって! コイツはそんなんじゃ……」

うろたえるヴァイリーさんの横で、私の頬も少し熱くなる。

街の人「照れない照れない! 昔っからアンタ本当、素直じゃないな! ハハハ…」

ヴァイリー「ったく……油売ってていいのかよ、おっちゃん」

街の人「おっとそうだった! 物騒な噂で武器の仕入れが追いつかなくてさ。大忙しなんだよ」

その言葉を聞いた瞬間、ヴァイリーさんの表情が一変した。

街の人「ご存じないですかい?獣化の呪いが出たって」

(獣化の呪い……?)

ヴァイリーさんを見ると、とても悲しそうな表情を浮かべていた。

(ヴァイリーさん……?)

街の人「ヴァイリー様も気をつけてな。 ……そうだお嬢さん、お近づきのしるしにこれやるよ!」

男性はそう言って、ずしりとした大きな袋を私に手渡した。

(わっ……! 重い……)

○○「あ、あの……?」

街の人「この辺で採れた木の実の詰め合わせさ! ヴァイリー様と食べてくれよ」

そうして男性は忙しそうに、その場を去って行った。

ヴァイリー「……ったく、あのおっちゃんは。ホラ、貸せ」

ヴァイリーさんは、私の腕から袋を奪った。

○○「ありがとうございます」

ヴァイリー「礼を言われるほどのことじゃねーよ」

ヴァイリーさんは、ふいっと顔を背けてしまう。

ヴァイリー「……そろそろ日が暮れるな。城へ戻るぞ」

○○「あの……さっきの噂って……?」

ヴァイリー「オマエには関係ない」

恐る恐る尋ねてみるものの、冷たくつき放されてしまった。

(……冷たかったり、優しかったり。それに呪いの話を聞いた時のあの表情は……)

(本当のヴァイリーさんって、どんな人……?)

夕陽に照らしだされるヴァイリーさんの横顔を見ていると、なぜか胸が苦しくなった。

 

<<第1話||第3話>>