太陽7話 熱を帯びる心

ヴァイリーさんの呪いが解けて、しばらく経った頃…―。

獣化の呪いの噂も次第に消え、街の人も平和に暮らしている。

執事「本当に、○○様には何とお礼を言ってよいか……」

私は客間で、夕食をご馳走になっていた。

○○「そんな……私は何も」

執事「ヴァイリー様の、あんなに穏やかな表情は初めて見ます。○○様なら、呪いを解いてくれると思っておりました」

○○「……あの、呪いが解けたのはなぜなのでしょう……?」

私は気になっていたことを、思い切って執事さんに尋ねてみる。

執事「真実の愛……○○様がヴァイリー様を思いやる気持ちが、呪いを解いたのです」

何の臆面もなく言い切る執事さんの言葉に、私の頬は熱を帯びた。

あの時気づいてしまった、ヴァイリーさんへの私の気持ち。

(この気持ちが、真実の愛……?)

ヴァイリー「おう!戻ったぞ!」

その声を聴いて、私の胸が跳ねる。

街を視察に行っていたヴァイリーさんが、勢い良く入って来た。

執事「お帰りなさいませ。すぐに夕食と湯の支度をいたします」

執事さんは退出してしまい、私達は二人きりになった。

ヴァイリー「熱でもあんのか?顔、真っ赤だぞ」

ヴァイリーさんは、無邪気に私に聞いてくる。

○○「な、なんでもないですっ!」

(ドキドキして、ヴァイリーさんの顔が見れない……)

ヴァイリー「ホントか?オマエの心臓の音、すげぇ聴こえるんだけど」

○○「……っ!」

(獣人って、そういえば耳がすごくいいって……)

○○「すみません……失礼します!」

恥ずかしさに耐えきれず、私はその場を去ろうとした。

ヴァイリー「あっ、おい……」

ドアノブに手をかけたとき、大きな手がその上から重ねられた。

○○「……っ!」

ヴァイリーさんが、すぐ後ろに立っていた。

ヴァイリー「……待てよ」

彼はもう一方の手をトンとドアにつき、私を囲う。

(背中が、熱い……)

まるで後ろから抱きしめられているようで、ヴァイリーさんの体温が私に伝わってくる。

○○「あ、あの……」

ヴァイリー「……オマエさ、あの時」

(あの時って……)

ー----

○○「私は……ヴァイリーさんのことが……」

ー----

○○「あっ、あのっ……私、もうこれで失礼します!」

言い募って、ヴァイリーさんの方を振り返ると……心配そうに私を見つめるヴァイリーさんと目が合い、また頬が熱くなってしまう。

ヴァイリー「オマエ、本当に熱ないのか?顔色が……」

○○「……っ!」

ヴァイリーさんが、私の額に手を当てる。

○○「……だ、大丈夫です!でもすみません、ちょっと休んできます」

高鳴る胸を落ち着かせたくて、私はその場を離れた。

去って行く○○の背中を、ヴァイリーは見つめていた。

ヴァイリー「……やっぱちゃんと、言わなきゃか」

さっきまで○○の額に触れていた手の熱を感じながら、ヴァイリーはひとりつぶやいた…―。

 

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