第2話 ブランデー・ケーキ

マルタン「君のようなお嬢さんに助けられて、ただで帰すわけにはいかないね」

こうしてマルタンさんが私を連れてきたのは…―。

○○「ここは……?」

そこは装飾豊かな建物が折り重なる、おしゃれな雰囲気の街並みで……。

辺りを見回すと、甘く芳醇な香りが鼻先を掠める。

マルタン「俺の住むヴァン・ブリュレの中心街だよ。目覚めさせてくれた、ほんのお礼に君を案内しようと思ってね」

マルタンさんが人の行き来するメインストリートを指差す。

その先にあったのは、オープンテラスのこじんまりとしたカフェだった。

マルタン「○○ちゃん、ブランデーをたしなんだことはあるかい?」

○○「あまり、ありません」

マルタン「そいつはもったいない!この国のブランデーは一級品なんだ。度数の高いお酒は無理でも、女の子は甘いお菓子なら大好きだろ?」

そういうと、マルタンさんは指を鳴らし、店員さんを呼びつけた。

しばらくすると、テーブルにお菓子が運ばれてきた。

マルタン「どうぞ、召し上がれ」

○○「いいんですか?」

マルタン「もちろんだよ」

白いお皿に載せられているのは、小さくカットされたフルーツケーキだった。

フォークで切り分けて、口元に運ぶと……

○○「おいしい……!」

鼻に抜ける軽やかなブランデーの香りは、どこか花畑を思い起こさせる。

まぶたの裏に広がった色とりどりの花々が咲く情景に、ふわっと頬に熱を感じた。

○○「すごくお酒がきいてるのに、重くなくて、これ本当に美味しいです」

すると…―。

マルタン「うんうん、素直でカワイイ反応だね」

ケーキを頬張る私を見て、マルタンさんが満足げに頷く。

マルタン「なんだか屈託なく笑う君を見てると、俺まで嬉しくなってくるね。よし、今日は○○ちゃんのために、オジサンが素敵なものをいっぱい教えてあげよう」

にこやかに瞳を細めていうと、マルタンさんは椅子から立ち上がった。

(……楽しみ)

ほのかに漂うブランデーの香りと、素敵な体験に、私の心はこの上なく弾んでいた…―。

 

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