第1話 荘厳な街並み

審判の国・アルビトロ 影の月…―。

澄みきった正義を表すかのように、アルビトロの空は高く美しかった。

荘厳な雰囲気を漂わせる街に足を踏み入れると、正面から歩いてくる人の姿が見えた。

純潔を思わせる白く美しい服に身を包み、凛と伸びた姿勢で歩く姿は見惚れてしまうほどで……

(ミカエラさん……!)

真白な翼を持つその人は、この審判の国で裁きを司る王子・ミカエラさんだった。

ミカエラ「……」

街の人1「ミカエラ王子だわ!」

街の人2「ミカエラ王子、ごきげんよう!」

ミカエラ「こんにちは。今日はとても良いお天気ですね」

役人1「ミカエラ王子、明日の裁判の書類ですが……」

ミカエラ「目は通しました。追加があればいただきますが」

ミカエラさんは、集まってくる人々ひとりひとりに丁寧に返事をしていく。

歩くだけで清らかな存在感を露わにする姿に、私も知れず意識を奪われてしまう。

ミカエラ「○○姫、よく来てくださいました」

私の目の前まで辿りついたミカエラさんは、丁寧に腰を折り、挨拶をしてくれる。

(なんて綺麗な人……)

ふわりと背中の羽が微かに動き、清らかさを私の目に焼きつけた。

○○「私こそ……ご招待くださってありがとうございます」

ミカエラ「ふふっ、当然です。僕を目覚めさせてくださったのですから。 ただ……いまだ君へのお礼が思い浮かんでいないのです」

○○「お礼だなんて、大丈夫です」

ミカエラ「無欲な方ですね。目を覚まして最初に見た君の印象通り……素直で欲のない、心の清らかな方なのでしょう」

(そ、そこまで言われると、恥ずかしいな……)

ミカエラ「しかし、恩人である君へ何もしないままでは、審判の国の王子としても、僕個人としても心苦しい。 せめて今夜は、豪華な晩餐をご用意させてください。 さあ、こちらへ」

○○「……はい、ありがとうございます」

紳士的な仕草でそっと手を差し出されてしまえば、その手を取らずにはいられない。

ミカエラ「……それと、緊張しているみたいですが、そんな必要もありませんよ」

○○「あ……はいっ」

親しげな笑みを向けられると、心がなんだか軽くなる。

ミカエラ「……僕の話し方もいけないのでしょうか。 じゃあ、もう少し砕けた話し方でいいかな?」

○○「もちろんです」

ミカエラ「ふふっ……ありがとう。じゃあ、そうするね」

(気を使ってくれてるんだ……本当に優しい人だな)

アルビトロに注ぐ柔らかな陽射しが、私達を包み込んでいた…―。

 

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