第2話 優雅な世界

その日、夜空に星が輝きはじめた頃…-。

ジョシュア「お似合いですよ」

ジョシュアさんがプレゼントしてくれたドレスに身を包み、私は歓迎パーティーの会場に向かっていた。

(やっぱり、お姫様として接してもらうのって慣れない)

私を恭しくエスコートするジョシュアさんの顔を見上げる。

ジョシュア「ああ……そうでした。 失礼。普通に接するのがお望みでしたね」

そう言って、ジョシュアさんは歩みを止めた。

ジョシュア「○○、緊張してるの?」

○○「え……」

口調を改めてくれたことに驚いて、私は瞳を瞬かせる。

ジョシュア「これでいいんだよね?」

気さくに笑いかけられ、こちらも思わず頬がゆるんだ。

○○「うん、ありがとう」

ジョシュア「よかった」

そう言ってジョシュアさんは、優しく微笑んだ。

ジョシュア「行こう」

そうして扉の前に立つと、扉番の人が重厚な扉を両開きにしてくれる。

扉番「トロイメア王家、○○様、ならびにジョシュア王子のご入場」

着席していた人々が、立ち上がって私達を迎えてくれる。

(わぁ……なんて華やかなパーティー)

私達が側を通ると、きらびやかなドレスの貴婦人方はドレスの裾を持ち上げ、燕尾服の男性は胸に手を当てて会釈をする。

慌てて会釈を返すけれど、自分でもわかるほどにぎこちない。

(緊張する……)

そう思って、身を固くしていると……

ジョシュア「そんなに緊張しなくて大丈夫。ほら、笑って」

そっと私の耳元に囁きかけて、ジョシュアさんが目配せをしてくれた。

(ジョシュアさん、優しいな)

そうして席につくと、間もなくシャンパンがグラスにそそがれる。

ジョシュアさんがグラスを手に立ち上がった。

ジョシュア「皆様、それではトロイメア王家○○姫、歓迎の印に。 乾杯」

ジョシュアさんがグラスを指先で持ち、歓迎のしるしに目線の高さにあげる。

その優雅さに、私は何だか急に自分を恥ずかしく感じた。

(ジョシュアさんって、本当に優しくて優雅)

位置皿が取り去られ、美しく花をあしらった前菜が運ばれてくる。

(それに比べて、私……どのフォークから使っていいかさえ、わからない)

目の前にはたくさんのナイフやフォークが置かれていて、手を伸ばすことさえためらわれていた。

その時、不意に視線を感じて隣を見ると…-。

ジョシュア「……」

(……ジョシュアさん?)

ジョシュアさんの瞳が、私をじっと見据えていた。

その視線に見つめられ、なぜだか動けずにいると……

ジョシュア「簡単だから大丈夫。僕の真似をして」

彼はそうささやきかけてくれ、私に見えるように一番外側のナイフとフォークを手にする。

ジョシュアさんのおかげで、私は何とか食事を始めることができた。

(お姫様って、こういうマナーも必要なんだろうな)

弦楽隊がゆっくりとした音楽で奏で、洗練された人々が上品に食事を口に運ぶ。

きらびやかな世界の中で、私は取り残されたような気持ちを感じていた…-。

 

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