月SS 胸が痛い理由

トルマリの部屋のベッドに寝転がりながら、僕は両足を抱えた。

静寂な部屋の中に、僕のため息が響く…―。

(なんで光らなかったんだろう……)

式典で、宝石を光らせることができなかった。

(僕はやっぱりトルマリがいないと駄目なのかな……)

泣きそうになるのをこらえるため、ベッドに顔をうずめる。

(トルマリの匂い……)

(○○のものとは違う……)

その時…―。

アルマリ「……っ!」

突然、胸がぎゅっと締めつけられるように痛くなった。

(○○のことを考えると、いつも胸が痛くなる)

アルマリ「どうしてだろう……」

(○○は、トルマリみたいに話しやすい)

(見た目だって……)

アルマリ「……」

僕の脳裏に○○の笑顔が思い浮かぶ。

(トルマリと○○は似てると思った……でも、違った)

○○の胸に手が触れた時、トルマリとは明らかに違った感触だった。

アルマリ「……」

(○○……びっくりしてた)

手をじっと見つめると、あの時の感触が蘇ってくるような気がした。

(あの日から僕は、○○を見る度に胸が痛くなって……)

アルマリ「……なんでだろう?」

(トルマリなら、この理由わかるかな?)

でも、今トルマリはいない…―。

(自分一人で解決しなきゃ駄目なんだ……)

(でも、どうやって……?)

途方に暮れていると、視線の先に本棚が目に入った。

その中に、恋愛小説を見つける。

(こういう本、僕は読まないけど……)

自然にその本に手を伸ばし、ページをめくる。

アルマリ「……!」

(ドキドキしたり、胸が締めつけられて苦しくなったり……)

(これって……)

アルマリ「もしかして……恋?」

(僕は、○○に恋をしているんだ…―!)

僕は初めて自分の気持ちに気がついた…―。

アルマリ「もしかして、宝石が光らなかったのって……」

(○○にきちんと言わないと)

僕は慌ててトルマリの部屋を出て行く。

足が自然と駆け出していた。

初めて抱いた恋心を、○○に伝えるために…―。

おわり。

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