月7話 月明りと涙

式典を終え、城に戻る…―。

アルマリは部屋の隅でうなだれ、ため息ばかりを吐いている。

心配で一緒にいるものの、かける言葉が見つからない。

(アルマリ、落ち込んでる……)

アルマリ「どうして……こんなことに……」

○○「アルマリ……大丈夫?」

アルマリ「……!」

私が近づこうとすると、アルマリは避ける様に遠ざかっていく。

(えっ……)

アルマリ「ごめん、○○……今、君と居るとなんだか苦しいんだ」

○○「アルマリ……?」

アルマリ「ひとりにしてくれないかな」

彼は私の目を見ようともしなかった。

○○「……う、うん」

胸に痛みを覚えながら、私はアルマリの部屋を後にした。

月明かりの下…―。

私は、アルマリの言葉を思い出していた。

――――――――――

アルマリ「ごめん、○○……今、君と居るとなんだか苦しいんだ」

――――――――――

(私……アルマリに何かしちゃったのかな……?)

寂しい気持ちを抱えながら、中庭のベンチで顔をうつむかせていると…―。

アルマリ「○○? どうしたの、遅くにこんなところで……!」

○○「アルマリ……!」

私に気づいたアルマリが、駆け寄って来るけれど…―。

アルマリ「……!」

はっとした表情になり、私から少し離れたところで立ち止まってしまった。

アルマリ「風邪、引くよ……?」

○○「アルマリ……」

ベンチから立ち上がり、アルマリに近づく。

アルマリは私を避けることはしなかったけれど、顔を強張らせて立ちすくんでいた。

(どうしたのかな……?)

○○「アルマリ……どうしたの? 私、何かしちゃったかな?」

アルマリ「ち、違う……自分でも、よくわからないんだ。 君といると、すごく胸が苦しくなって……。 あの力が消えたのも、そう感じるようになってからなんだ……」

アルマリは潤んだ瞳を、夜空に向けた。

アルマリ「僕……街の皆に悲しい顔をさせちゃった。 トルマリがいなくても……ひとりでやらなきゃいけなかったのに……」

アルマリの頬に一筋の涙がこぼれ、やがてとめどなく大粒の涙が流れ出す。

○○「……アルマリ」

涙を拭ってあげたいと思って、手を伸ばそうとするけれど……

(また、アルマリを困らせてしまうかもしれない……)

伸ばしかけたその手を止め、ぎゅっと自分の手のひらを握りしめた。

アルマリ「どう……して……」

月明かりが、彼の涙を優しく照らす。

私はその涙が止まるまでずっと、傍にいることしかできなかった…―。

 

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