第4話 鍛冶屋のギルド

よく晴れた、翌朝…-。

カリバーンは約束通り、私を町へと連れ出してくれた。

カリバーン「この辺りは昔から、他の地域にはいない巨大で獰猛なモンスターが多く出没します。 アヴァロンという国は、それらモンスターを討伐する目的のために発展してきました」

町の通りに出ている鍛冶屋ギルドの前を歩きながら、カリバーンが説明をしてくれる。

ギルドは、武器を手にとって吟味しているお客さん達で、活気に溢れていた。

カリバーン「なので、武器や防具の製造技術を修得している者や、扱いに長けた者が多いんです」

○○「なるほど」

カリバーン「今では武器や防具を求めて、国外から多くの人々がやって来ます。 モンスターに遭遇する危険があるにも関わらず」

○○「そうだったんですね……」

私は感心しながら、目の前に並ぶ武器を眺めた。

見たことのないものも多く、私の身長より大きな槍や大剣などもある。

(すごく重そう……これを皆、扱うんだ)

(武器……私にも扱えるようなものって、あるのかな?)

ずらりと並んだ武器を眺めながら、思考を巡らせていると……

カリバーン「すみません」

○○「え……?」

カリバーン「女性を武器屋に連れてくるなんて。興味ありませんよね……」

申し訳なさそうに謝りながら、カリバーンが首の後ろに手を当てる。

○○「いえ、楽しいです」

カリバーン「本当ですか……?」

○○「本当です。今もこの武器、すごく重そうだなぁって……。 私でも扱える武器ってあるのかなって、考えていました」

カリバーン「……ははっ」

カリバーンが口に手を当てながら、控えめな笑い声をたてる。

○○「カリバーン?」

カリバーン「貴女は、俺の予想しないようなことを口にしますね」

ふっと優しい視線を向けられ、胸が小さく音を立てる。

○○「そ、そうですか……?」

カリバーン「ええ。視察に訪れる女性は大概、武器の外見には興味を持っていただけるのですが……。 自分で扱おうと考える方は、初めてです」

嬉しそうに笑うカリバーンだけれど、私は恥ずかしくて思わずうつむいてしまう。

○○「カ……カリバーンの剣もすごく重そうですね」

カリバーン「これですか?」

カリバーンは、腰に携えている剣に視線を落とした後、そっと鞘に手を添えた。

カリバーン「そう……すごく重いですよ。この剣は、特別なので」

○○「特別?」

カリバーン「はい。私は剣を擁する王子……代々受け継がれている、特別な剣なので……。 兄は盾を持っています。最強の剣が私、最強の盾が兄……。 二人で、この国を守り導くことができるようにと」

ぐっと剣の柄を握りしめる彼の様子に、強く決意を感じる。

カリバーン「そのためなら、俺は命を懸けられるんです」

○○「命を……」

カリバーン「ああ、すみません……貴女の前だと、つい口数が多くなってしまうみたいだ」

カリバーンが、ふっと柔らかく瞳を細める。

(強くて、優しい人……)

(けど……)

カリバーン「○○?」

○○「立派だと思います……けど。 カリバーンに何かあったら……きっと皆悲しむと思います。 だから……」

カリバーン「……」

カリバーンの瞳が、困惑に揺れていた。

カリバーン「貴女は、優しい人だ」

この上なく優しい眼差しが注がれて、私は言葉を失った。

カリバーン「もちろん命を粗末にするつもりはありません。ですが……それが私の使命なので。 兄も、城の兵士も。皆、思いは同じはずです」

○○「……」

揺るぎない言葉に、切なさが込み上げる。

カリバーン「すみません、話を戻しましょう。剣の話でしたよね」

○○「あ、はい……でも、そんなに重い武器は、女性にはなかなか扱いが難しそうですね」

カリバーン「そうですね。女性だと鞘から抜くのも、一苦労するかもしれません。 でも我が国には勇猛果敢な女性剣士もたくさんいます。女性用の剣を持ってみますか?」

○○「いいんですか?」

カリバーンは王家御用達の武器職人を呼び寄せると、美しく装飾された繊細な剣を私に握らせてくれた。

カリバーン「これは王家の姫が持つために作られた護身用の剣です」

○○「すごく美しいですね……」

カリバーン「構えは、こう……」

○○「……っ!」

不意に後ろから抱きすくめられるように手を握られ、心臓が跳ねた。

カリバーン「失礼しました……つい」

振り返りカリバーンの顔を見上げると、彼の端正な顔が間近に迫って……

○○「……!」

吐息がかかるほどの距離で視線がぶつかり合い、何も言えなくなってしまう。

その時…-。

カリバーン「……!」

唐突に、不安を感じさせるような重い鐘の音が辺りに鳴り響いた…-。

 

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