第5話 仮装の候補

それからも私達は、いろいろな本を読み漁った。

ロルフ「○○ちゃん、本を選んでみました……」

高く積み上げた本を両手に抱えながら、ロルフ君が覚束ない足取りで近づいてくる。

○○「すごくたくさん見つけたね」

抱えている本を半分受け取りながら声をかけると、ロルフ君は控えめに微笑んだ。

ロルフ「これぐらい集めれば大丈夫……?」

○○「うん。この中から仮装できそうな登場人物を探してみよう」

本をおろした私達は、壁を背もたれ代わりに床の上へ座ると、しばらく黙ってページをめくった。

ロルフ「あ……○○ちゃん、これ……」

ロルフ君が膝に広げていた本の挿し絵を指さしながら、私に声をかけてくる。

その挿し絵には、悪魔の王様の姿が描かれていて…-。

ロルフ「……お父さまそっくりです」

(た、確かに雰囲気は似ているけれど)

(さすがに頷けない……)

ロルフ「そういえば……」

返事に詰まっている私の隣で、ロルフ君が何かを思いついたように声を上げる。

瞳をキラキラ輝かせながら、別の本のページをめくると……

ロルフ「見て。お母さまはこの魔女にそっくりです……」

挿し絵に描かれていたのは、優しそうな魔女だった。

○○「じゃあロルフ君の仮装は、悪魔か魔女にする?」

ロルフ「はい、そうします」

○○「候補が決まってよかったね」

ロルフ「○○ちゃんのおかげです」

ロルフ君はかわいらしく、小さく頭を下げた。

○○「衣装は魔女を選ぶの?」

ロルフ「お母さまみたいな優しい魔女……うん、着てみたいです……」

○○「ロルフ君の仮装を見るのが楽しみだな」

どんなふうになるんだろうと想像しながら、改めて本の挿し絵を眺める。

すると、隣から眠たげな欠伸が聞こえてきた。

ロルフ「あ、ごめんなさい……安心したら眠くなっちゃって……」

謝りながらも、ロルフ君の目は今にももう閉じてしまいそうだった。

(もしかして、衣装のことで悩んでいたせいで、あまり眠れていなかったのかな?)

ロルフ「少しだけ……」

つぶやくようにそう言うと、私の肩に頭を寄せ、目を閉じてしまった。

(やっぱりまだ小さな男の子って感じでかわいい……)

微笑ましく思いながら、ロルフ君の寝顔を見つめているうち、私にも眠気がやってきて…-。

結局、私とロルフ君は額を寄せ合ったまま、夕方近くまで眠ってしまった…-。

 

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