第1話 木陰で再会

頬を撫でる風が、突然に涼しくなったある日…-。

私は、シャーロット文学賞の授賞式に招かれ、文壇の国・ミステリアムへとやってきていた。

(藤目さん……文学賞を受賞するなんてすごい)

先日、眠りから目覚めた藤目さんは、王子でありながらも恋愛小説を書く作家だった。

(本当に素敵なラブストーリーだったな)

ここへ来る旅路……

私はずっと、今回賞を受賞する藤目さんの作品『木漏れ日の恋』を読んでいた。

直接お祝いを言いたくて、私は藤目さんの登場を心待ちにしていた。

アナウンス「授賞者の登場まで、いましばらくご歓談をお楽しみください・・・-」

もう何度目かのこのアナウンスに、会場内が大きくざわめく。

(藤目さん、まだかな)

(すごい人で、ちょっと人酔いしてしまったかも……)

一向に姿を現さない藤目さんを心配しながらも、私は少しだけ外に出ることにした。

爽やかな空気の中、少しだけ会場の外を歩く。

すると、木陰に見覚えのある人影を見つけた。

(あれは……)

〇〇「ふ、藤目さん?」

藤目さんは、びくりと肩を震わせる。

藤目「よかった……貴方でしたか」

〇〇「どうしたんですか?」

藤目さんは、私を木陰に引き込み、人目を気にするそぶりを見せる。

藤目「……風が気持ちよかったものですから」

〇〇「……皆さん、待ってますよ」

笑いかけると、藤目さんは私に背を向けてしまった。

藤目「……駄目だ」

〇〇「え?」

藤目「私には、とてもあのような場に立つことはできない」

そう言い捨てて、藤目さんは早足に去って行く。

〇〇「ふ、藤目さん……!」

私は慌てて彼の後を追った…-。

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