第4話 花嵐の予兆

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○○「あの、桜花さん。紫珠さんと何かあったのですか?」

桜花「……何も?」

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その桜花さんの様子に、それ以上私は何も言うことができなかった。

用事も終えて、私達は再び城へと歩みを進めていた。

途中の市街地で、桜花さんと商店に立ち寄ろうとした時……

○○「……っ!」

突然、私は何者かに背後から羽交い絞めにされ、動きを封じられてしまった。

桜花「○○さん!?」

(誰……!?)

恐る恐る目線を背後へやると、何かに怯えたような表情をした男性がいた。

桜花「……○○さんを放してください」

町人1「か、金を出せ!」

攻撃的な言葉とは裏腹に、男性の体は小刻みに震えている。

(この人……?)

桜花「……話は聞きます。まずは、彼女を放してください」

町人1「……!!」

男性の震えは、ますます大きくなっていく。

(どうしよう……何かして、逆に桜花さんに迷惑がかかる事態になったら……でも)

私を拘束する腕に手を触れると、びくっと男性が肩を震わす。

○○「あの、事情を聞かせていただけないでしょうか」

明らかに戸惑い、迷っている様子が伝わってくるけれど……

町人1「……」

しばらくすると、ゆっくりと男性は手の力を緩めた。

桜花「……!」

瞬間、桜花さんが私の腕を強く引き、守るように背に隠す。

桜花さんは男に厳しい視線を向け…―。

○○「桜花さん、待ってください!」

桜花「○○さん?」

○○「……何かあったのですか?」

私は男性に話しかけた。

町人1「嫁が……病気で金が必要なんだ」

○○「そうだったんですか」

私は、持っている硬貨を集めて、男性に近寄った。

桜花「○○さん!」

○○「大丈夫です」

心配そうな桜花さんに微笑みかける。

○○「どうぞ。少しでもお役に立てればいいのですが……」

町人1「……」

男性は、私の手から硬貨をすべて持って立ち去って行った。

桜花「○○さん、むちゃしないでください……!」

○○「ごめんなさい。でも、きっと、悪い人じゃ……」

町人2「あいつ、確か嫁さんなんていませんよ」

○○「えっ……」

町人3「盗人の下っ端の奴です。全くあいつは……」

○○「嘘だったんですね……」

(馬鹿だ……私)

がっくりと肩の力が抜けていくことがわかる。

(けれど、あの震え方……何か事情があったことは確かだと思う)

そんなことを考えていると、桜花さんが私をじっと見つめてきた。

桜花「彼を、恨まないんですか?」

○○「え……?」

桜花「信じた人に裏切られたら、誰しも憎しみの心を持つはずです」

(……呆れられたのかな)

桜花「……○○さんは、優しすぎます」

桜花さんは、そう言いながら視線を地面に落とした。

その時…―。

再び水滴が、私の頬に落ちてきた。

桜花「雨ですね。傘が役に立ってよかった。 急ぎましょう。○○さん……怖い思いをさせてしまいました」

小雨の中、私達は城へと急いだ…―。

城につくと、従者の方達の歓迎を受けた。

従者「ようこそいらっしゃいました」

○○「お世話になります」

従者の方に挨拶を終えた、その時…―。

桜花「……っ」

唐突に、桜花さんが苦しそうに咳き込んだ。

○○「大丈夫ですかっ……!?」

思わず触れた桜花さんの手の冷たさに、私は息を呑んだ。

桜花「だい、じょうぶ……です……」

苦しそうに微笑み、そう答えた瞬間だった。

○○「……桜花さんっ!」

ふっと、桜花さんの体から力が抜ける。気を失った彼の体を支えながら、私は何度も名前を呼んでいた…―。

 

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