第1話 花時雨の迎え

四季の国・蓬莱、陽の月…―。

地にも空にも、うららかな春の光が降り注いでいる。

爽やかな風が吹き、私の頬を撫でていく。

(暖かくて、心地よい)

その時…―。

(雨……?)

突然、空から水滴が一粒、二粒……とこぼれ落ちてきた。

私は桜の木の下へ急ぎ、雨宿りすることにした。

(花びらが……)

ふと、私の目の前を薄紅色の花弁が舞い落ちる。

(雨で散ってしまわないといいけど……)

そう思いながらも、その優雅な光景に、私はつい見とれてしまった。

……

その美しさに時間を忘れて眺めてしまっていて、いつの間にか雨が止んでいたことにも気づいていなかった。

(行かなきゃ)

再び歩みを進めようとした時、前方に人影が見えた。

○○「桜花さん!」

花弁が舞う中、桜花さんは手に二本、和傘を持って静かにたたずんでいた。

女性と見間違えるほどに、佳麗な顔立ち……舞い散る桜を背に、柔和な表情で微笑む桜花さんは、息を呑むほどに美しかった。

桜花「これは必要なかったですね」

○○「も、もしかして……迎えに来てくださったのですか?」

(わざわざ来てくださるなんて)

恐縮している私に向かい、桜花さんはくすりと上品に笑う。

桜花「これくらい、どうということはありません。だって…。 あなたも眠りからこの世へ、私を迎えに来てくださったじゃないですか」

桜花さんの優しい微笑みを見ると、心に春のような暖かさが広がっていった…―。

 

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