太陽9話 果敢な想い

窓の外では、変わらず桜の花びらがはらはらと静かに散っていた。

桜花「父上とお話しているところを見かけました……呪いのことを?」

優しく問いかける彼に、私は頷いた。

○○「……桜花さんは、恋をしていらっしゃるんですね」

すると桜花さんが、くすりと上品に笑う。

桜花「まさか、お気づきではないのですか? ……あなたに、恋をしていることを」

(え……)

そっと、桜花さんが私の頬に手を伸ばす。

(私に……?)

彼の美しい瞳に、声に、耳まで朱に染まってしまう。

でも、その指先が私に触れることは、なかった。

桜花「なんて悲しい呪いなのでしょうね。 触れれば触れるほど、好きになる。好きになればなるほど、死が近づく……」

優雅な笑みを消し、彼は深く、苦しそうに息を吐く。

桜花「呪いをかけたのは、紫珠殿です。父上の、恋人でした」

(やっぱり……)

桜花「あなたに出会ってから、紫珠殿の元に何度も足を運びました。 しかし、どうあっても呪いを解く気はないそうです」

○○「……」

国王様を愛する気持ちが、激しい憎悪へと変化した……

桜花「国のことを考えると、私は死ぬ訳にはいきません。だから、忘れようとして……」

桜花さんが切なげに微笑み、私を見つめる。

美しい彼の瞳が、夕陽に照らされて幻想的な色をたたえる。

桜花「でも、恋をしないなど……無理なのですね」

○○「……!」

桜花さんはふらりと体制を崩し、床に倒れ込みそうになった。

○○「桜花さん……っ!」

とっさに桜花さんの体を支えてしまう。

(いけない……!!)

慌てて傍を離れようとするけれど、桜花さんは私の服の袖をぎゅっと掴んで、離さない。

桜花「……大丈夫です」

その不思議な心地よさに、彼の温もりに……

私もはっきりと、自分が彼の傍にいることを望んでいることを痛感する。

(桜花さんの傍にいたい。でも、このままでは、駄目だ……)

やり場のない思いが胸を締めつけ、私は唇を噛みしめた…-。

 

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