さんさんと輝く太陽の下…-。
海へ向かうことにした私達は、勘を頼りに脇道をどんどん進んでいった。
歩くほどにメインストリートのざわめきは遠ざかって、潮の匂いが濃くなってくる。
○○「あ……!」
細道を曲がると突然視界が開け、その先に入江が広がっていた。
周囲に人の姿は見当たらず、白い砂浜の上に視線を向ければ、足跡一つついていない。
陽影「すごいな! きっとここ、観光客の知らない穴場だ」
腰に手をあて、辺りを見回した陽影さんが顔をほころばせる。
(よかった……やっぱり陽影さん、街中にいる時よりずっと楽しそうに見える)
○○「こんな場所を偶然見つけられるなんて、思ってもみなかったです」
陽影「ツイてたな、オレ達」
○○「はい!」
寄せては返す波の音と、カモメの緩慢な鳴き声が響く。
メインストリートを歩いている時と違って、私達は自然な距離で寄り添いながら、海を眺めた。
陽影「なんか……うまく、アレできなくてゴメンな」
○○「え……?」
陽影「……もっとちゃんと、オマエを楽しませてやるつもりだったんだけどさ」
○○「そんな……私、今すごく楽しいです」
陽影「○○……」
○○「陽影さんは?」
陽影「……オレはオマエがいれば、はっきり言って場所なんて……!」
陽影さんが早口でまくし立てるように言う。
その態度がなんだかかわいくて、私は思わず笑ってしまった。
陽影「わ、笑ってんじゃねーよ……」
○○「ごめんなさい」
頑張って笑いを抑えようとした私を、陽影さんが不満そうな顔で睨む。
陽影「とにかく! オマエは別につまらなくはないんだな」
○○「はい、今すごく楽しいです。 んな綺麗な海も見られたし」
陽影「……まあでも、そうだな。 この海辺に来られたのは、すごくよかった」
○○「陽影さんの国の海も素敵でしたけど、ここも素敵ですね」
陽影「……そうだな。 オレも初めて来たけどこんなに綺麗な海があるんだなって、感動した」
陽影さんは、太陽の光を浴びながらまぶしそうに海を眺めた。
陽影「そういやビーチの方では氷菓の国のアイス屋が出店してるらしいぞ」
○○「そうなんですか? 行ってみたいですね! ……あ」
勢い良く聞き返してから、ハッと我に返る。
(……食い意地でちゃった……恥ずかしい)
真っ赤になってうつむいている私の頭を、陽影さんがクシャクシャッと撫で回した。
陽影「ハハッ……なんだよオマエ、アイス好きなの? まあオレも、楽しみにしてるけどな!」
(陽影さん……)
○○「……はい! 早く食べに行きたいです!」
彼の無邪気な笑顔が、私の気持ちを素直にさせてくれて……
飾らない自然な態度でいられる彼との時間は、とても居心地がよかった…-。