ーーーーー
陽影『オマエなあ、外から眺めてるだけじゃつまんないだろ。中入ってみろよ』
ーーーーー
陽影さんに後押しされて、かわいいアクセサリーが置いてある店に入ったけれど…-。
女性客で賑わう店の中で気まずそうにしている陽影さんを見て、私は申し訳なさを覚えた。
陽影「○○、どうした?」
黙り込んだ私を見て、陽影さんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
○○「ひ、陽影さん…一旦外に出ましょう?」
陽影「は? もういいのか? 店に入ったばっかだぞ」
そう言っている合間にも、店には女性客ばかりが入ってくる。
○○「はい、大丈夫です!」
私は頷きながら、そそくさと店を出た…-。
店の外に出たけれど、陽影さんは納得がいかない様子で首を傾げている。
陽影「なんだよ? 急に暗い顔して、どうかしたのか」
○○「……すみません、気が利かずに」
そう言うと、陽影さんが驚いたように目を丸くした。
陽影「は? 何言ってるんだよ。 なんで突然、そんな話……?」
○○「それは…。 私に付き合わせてしまって……陽影さん、あまり興味なかったですよね」
陽影「ああ…そんなこと気にしてたのかよ」
陽影さんは困ったように苦笑いを浮かべ、頭を掻いた。
(でも、思い返してみると……)
メインストリートを歩いていた時も、陽影さんはなんだかずっと落ち着かない様子だった。
○○「陽影さんってもしかして、こうやって過ごすの、苦手なんじゃ…」
陽影「そんなこと気にしなくていいって! オマエが楽しいのが、オレ、一番嬉しいからさ! ……あ」
陽影さんはハッとした表情になった後、そのまま黙り込んでしまった。
けれど、その顔はとても赤くなっていて…-。
(どうしよう、嬉しい……けど)
私はときめく気持ちを、とりあえず一度抑え込んだ。
(私だって、陽影さんに楽しんで欲しい)
○○「私は……二人が楽しい方がいいです」
陽影「な、何言ってんだよ…!」
真っ赤になった顔を隠すように、陽影さんが腕を上げる。
○○「私だって、陽影さんに楽しんで欲しいです」
陽影「な、なんだよそれ…!」
○○「なんだよって……陽影さんが楽しんでるところが見たいなあって」
陽影「オ、オマエ……」
素直な気持ちを言葉にしたつもりだったけれど、陽影さんはなんだか難しい顔になって…-。
陽影「オレの気も知らず、無邪気にそんな顔しやがって……!」
○○「? あの、陽影さん……」
陽影「待て! しゃべるな! とりあえずオレを落ち着かせろ! 全く……」
陽影さんはブツブツ文句を言いながら、背を向けて深呼吸を繰り返した。
陽影「……とにかくオマエの気持ちはわかったから……」
(よかった……)
私はホッとして、ようやく強張っていた表情を緩められた。
○○「じゃあ、次は陽影さんが過ごしやすい場所に行きましょう?」
陽影「オレが過ぎしやすい場所?」
○○「はい。どこがいいですか?」
陽影「うーん……」
陽影さんは少しためらいながらも、返事をくれた。
陽影「だったら……海の方に行ってみないか?」
○○「海……はい! 楽しそうです!」
陽影「ああ、きっと楽しいぜ! オレの国の海と、どっちがでっかいかな」
私達の間には、もう先ほどまでのぎこちなさはない。
まぶしい太陽の光の下、人の行き交う大通りを逸れ、私達は海を目指して歩き始めた…-。