太陽9話 民のために

私とアポロは、ひとまず身を隠すためではあったけれど…

街の人の助けを得て、領の離れで生活を始めた。

(ここへ来てからのアポロ、以前とは全然違う顔をみせてくれるようになったな)

子ども「あーっ、アポロ様っ、お野菜のお水は、もっとやさしくしてあげてください!」

アポロ「優しくだと?そんなものはわからん」

街の人々と暮らし、生活に触れる中で、アポロの表情は豊かになった。

今も、眉間に皺を寄せて、教えてくれる子どもをじっと見ている。

アポロ「おい、子ども。優しくというのを教えろ」

子ども「うーんとね、元気にそだってね、はなしかけるのが、やさしいかな! じゃあね!アポロ様、あとはお願いします!!」

アポロ「お、おいっ!」

その光景に、思わず笑みがこぼれる。

そんな私を見たアポロが、不機嫌そうに顔を歪めた。

アポロ「…見ていたのか」

○○「はい。とても微笑ましくて」

アポロ「不思議だ…」

○○「え?」

アポロ「不思議だと言ったのだ。街の人間は、俺の知らぬ多くのことを知っている。 作物を育て、皆で協力し…自ら考え、行動している」

〇〇「…アポロ」

アポロ「俺は、己が王としてふさわしく在り続けることだけを考えていた。 王が絶対的な力を持って導いてこそ、民も幸せなのだと思っていた。 だが…どうやら、違ったようだ」

○○「アポロ…」

過去を振り返り、こぶしをきつく握りしめるアポロに…そっと寄り添った時…

側近「アポロ様…」

街へひそむ間にも連絡を取り続けていたアポロの側近が、姿を現した。

アポロ「…どうした」

側近「そろそろ皆、限界かと思います…。 アポロ様の代わりに領主となられたお兄様が、悪政の限りを」

アポロ「悪化しているのか」

側近「はい…圧政と暴君は激しく、逃げ出そうとする者は見せしめに殺されている始末です…」

○○「なんてひどい…」

側近「そろそろ、なんらかのご決断を」

アポロの瞳に、決意の強い光が宿る。

それはここ最近、時折見せていた、強く美しい輝きだった…

アポロ「王が王たるために国があるのではない。国とは…民なのだ」

側近「アポロ様…!」

アポロ「民のために戦う。そうすべき時だ」

アポロの、揺らぐことのない強く気高い孤高の眼差しが…

民を守ろうとする強さをはらみ、その力を増す。

口元に湛えた笑みとその横顔は、美しく堂々としたものだった…ー。

 

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